今月の主題 骨粗鬆症と臨床検査
巻頭言
骨粗鬆症と臨床検査―予防と治療の確立に向けて
細井 孝之
1
Takayuki HOSOI
1
1国立長寿医療センター先端医療部
pp.567-568
発行日 2007年6月15日
Published Date 2007/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101214
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骨量はすべての臨床検査データ中で加齢に伴う変化が最も大きなものの1つであり,本誌「臨床検査」で骨粗鬆症が取り上げられる意味はそのあたりにもある.加齢に伴う骨量減少を背景として発症する原発性骨粗鬆症の罹患者は,1,000万人ともいわれている.骨粗鬆症という病名の知名度は,一般にも決して低くはない.しかしながら,本症に関する診療が行き届いているとはいえず,国際的にも“under-treatment”の疾患として認識されている.高齢者人口の増加が続くなかで,罹患者がますます増えることが予想されるが,本症に関する啓発活動が続けられないかぎり,多病を特徴とする老年期疾患の診療の中に埋もれてしまう心配すらある.
転倒や骨折は,加齢とともに増加し,高齢者人口が増加し続ける今日,ますます大きな問題になっている.骨粗鬆症は中高齢者における骨折の最大の原因疾患である.骨粗鬆症に伴う代表的な骨折は,脊椎の圧迫骨折,前腕骨遠位端の骨折,大腿骨頸部骨折である.わが国における大腿骨頸部骨折の発生数は,1987年約5万3,000例,1992年約7万7,000例,1997年約9万例,2002年約12万例と増加の一途をたどっており,その対策は喫緊のものである.
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