特集 プロテオミクスに向かう臨床蛋白質検査
2章 プロテオミクスに利用される最新の機器類
1.二次元電気泳動,画像解析,スポットカッティング
1) プロテオミクスにおける蛋白質発現ディファレンシャル解析―蛍光標識二次元ディファレンス電気泳動:Ettan(TM) DIGE
石田 友紀
1
Yuki ISHIDA
1
1オムシャムバイオサイエンス(株)プロテオミクス部
pp.1269-1276
発行日 2003年10月30日
Published Date 2003/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101013
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はじめに
現在のプロテオミクスでは発現差異,翻訳後修飾,発現量の低い蛋白質の解明が注目されている.これは蛋白質発現を網羅的に解析する際,生理学的,病理学的といった何らかの状態の異なる細胞・組織の蛋白質発現ディファレンシャル解析を行うと,ある生命現象にかかわりのある一群の蛋白質群を効率よく探し出すことができ,蛋白質の翻訳後修飾は多くの生命現象の機能を司るからである.また低発現量の蛋白質は,前分画の工夫による濃縮技術や高性能質量分析計(MS)の開発により解析が可能になりつつある.
これらを解明するプロテオミクス手法として蛋白質サンプルを二次元電気泳動(2D-PAGE)法で分離し,分離された個々の蛋白質を,MSを用いて同定する手法が主流である.しかし,この系での蛋白質の定量的な発現ディファレンシャル解析にはいくつかの問題点がある.他の実験系に比べ,2D-PAGEはゲルごとのスポットパターンやボリュームの再現性をとることが難しい.これは泳動時のバラつきだけでなく,染色,画像化,画像解析にも原因があることが挙げられる.よって,同一サンプルでも必ず反復実験を行う必要があり,研究者の実験負担が大きいが,得られる成果はあまり多くなかった.そのため2D-PAGEに代わる手法が開発されつつあるが,発現量の差異解析手法としては発展途上である.
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