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1.下大静脈内に腫瘍塞栓をきたした腎細胞癌
56歳男性.血尿,発熱を主訴に当院を受診した.超音波検査では右腎下極に直径約6cm大の低エコー腫瘤を認めた.腎静脈はechogenicで,カラードプラ法において血流シグナルを認めなかった(図1:矢頭は腎静脈を,矢印は腎動脈をそれぞれ指す).以上より腎細胞癌による静脈内腫瘍塞栓と考えた.腎静脈から下大静脈にかけて塞栓を追跡したところ,肝静脈流入部付近まで充満しているのが確認された(図2).CT像を図3に示す.矢頭は腫瘍塞栓の充満した腎静脈を,矢印は腫瘍をそれぞれ指す.腎細胞癌は近位尿細管上皮由来の悪性腫瘍で腎充実性腫瘍全体の約8割を占める.主な症状としては,血尿,側腹部痛,腫瘤触知があるが,最近は検診や他疾患のスクリーニングの際に無症候性で発見されることも多く,本疾患の発見における超音波の役割は大きい.腎細胞癌が発見されると,staging決定のために腎静脈・下大静脈内の腫瘍塞栓および所属リンパ節をチェックする必要がある.本例のごとく,腫瘍が下大静脈内に進展するが横隔膜を超えない場合,TMN分類においてT3bと分類される.
2.腎動静脈瘻を伴った腎動脈瘤
50歳女性.高血圧および間欠的な肉眼的血尿を主訴に来院した.超音波検査にて左腎下極に直径約4.5cm大の囊胞性病変を認めた(図4).カラードプラ法(図5)にてその内部に乱流を呈する血流シグナルを認めたため,囊胞ではなく動脈瘤と考えた.さらに,左腎静脈の拡張を認めたが,動脈との交通は超音波上明らかではなかった.3-D CT(図6)では左腎動脈の瘤状拡張(白矢印)とそれに接する拡張した左腎静脈(黒矢印)を認めたため動静脈瘻の合併が疑われた.血管造影にて左腎動脈瘤から腎実質相よりも早期に造影剤が左腎静脈に流入しており腎動静脈瘻を伴った腎動脈瘤と診断した.本例では当初,腎囊胞が疑われたがカラードプラ法を用いることにより,動脈瘤であることが判明した.囊胞性病変を認めた場合,血管性病変との鑑別を念頭におき,カラードプラ法を施行すべきであると考える.
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