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1. 症例1
66歳男性.HCV抗体陽性のため近医でフォローアップされていたところ,超音波にて肝内に腫瘤を認めたため当院に紹介となった.当院で施行された超音波では,S5に直径約3cm大の低エコー結節(図1)を認めた.内部は不均一でmosaic patternを呈していた.halo(辺縁低エコー帯)は明らかでなかった.パワードプラ法(図2)では,その栄養血管が結節を取り囲むように走行し分枝して結節の中心へと向かう“basket pattern”を呈し,結節内部の微小血管の血流が比較的明瞭に表示された.以上より,肝細胞癌と診断した.古典的肝細胞癌では,basket patternが血流モデルとして診断に有用な所見であり,FFT解析では結節へ流入する拍動波,結節内の拍動波,ならびに結節から流出する定常波が特徴とされる.カラードプラ法(速度表示法)が平均周波数の変移をパラメータとして表示するのに対し,パワードプラ法は,そのパワースペクトラムの変化を積分してカラー表示する方法であり,いろいろな特徴を有している.その主なものは,①空間分解能が向上する,②信号雑音比が大きいため血流描出感度が高い,③検出感度がビーム方向の角度に依存しにくい,④折り返し現象がない,などである.本法および造影剤の登場により,超音波を用いた腫瘍血流の詳細な評価が可能となった.
2. 症例2
77歳男性.人間ドックで右副腎に腫瘤を指摘されたため当院を受診した.生来健康で,高血圧や電解質異常を認めなかった.超音波検査では,右腎上極と肝の間に比較的均一な高エコーを呈する腫瘤を認めた(図3).部位的に右副腎と思われる位置にあること,および高エコーを呈する腫瘤であることから,副腎骨髄脂肪腫(aderenal myelolipoma)を第一に考えた.その後の腹部単純CTおよびMRIにて副腎骨髄脂肪腫と診断された.副腎骨髄脂肪腫は副腎皮質の良性の無機能性腫瘍で,病理学的には成熟した脂肪組織と骨髄組織とからなる.本例のごとく,無症状で偶然発見されることが多い.脂肪組織を含有するため各種modalityで特徴的な所見を呈する.すなわち,超音波で高エコー病変,CTで低吸収病変,MRIのT1強調像で高信号域として認められる.亜急性の出血を伴う場合,超音波では内部エコーが不均一となり注意が必要である.また,石灰化を伴うことがあるが,これは過去の出血を反映した所見であるとされている.
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