特集 ナノテクノロジーとバイオセンサ
各論
Ⅱ. バイオセンサ関連
5. 熱レンズ顕微鏡による非蛍光性分子の超高感度検出
馬渡 和真
1
,
北森 武彦
2
Kazuma MAWATARI
1
,
Takehiko KITAMORI
2
1(財)神奈川科学技術アカデミー(KAST)光科学重点研究室マイクロ化学グループ
2東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻
キーワード:
熱レンズ顕微鏡
,
マイクロチップ
,
非蛍光性分子
Keyword:
熱レンズ顕微鏡
,
マイクロチップ
,
非蛍光性分子
pp.1487-1499
発行日 2006年11月30日
Published Date 2006/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100785
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はじめに
DNAチップやマイクロチップ,単一細胞などに代表されるように,最近分析対象がマイクロ・ナノサイズ化しており,それに伴い検出法にはミクロ空間をin situ,in vivo測定できることに加えて,単一分子レベルの感度と汎用性が求められている.これらの要求に対しては,従来から光学的な測定法が主に用いられてきた.特に,感度の点から,レーザー誘起蛍光法を応用した共焦点蛍光顕微鏡や全反射蛍光顕微鏡が用いられており,実際に単一分子測定が多数報告されて1),現在では誰でも使えるシステムが市販されるに至っている.しかし,蛍光法は原理的に測定対象が蛍光物質に限定されるために,汎用性という点が欠落している.また,ナノバイオの進展とともに,生体物質を非標識(ありのままの状態)で測定するニーズも高くなってきている.これらの背景のもとに,筆者らは非蛍光性物質を単一分子レベルの感度で測定できる熱レンズ顕微鏡を独自に開発して,医療・環境・バイオなど様々な分野に応用してきた.熱レンズ分光法自体は約40年前から知られている古い原理であるが,顕微鏡との組み合わせを実現できたのは筆者らが最初であり,これは熱レンズ分光法に不可欠な光学的工夫に起因している.現在では,熱レンズ顕微鏡はミクロ空間の高感度かつ汎用的測定手法として広く認知されてきており,実際にベンチャーより装置が実用化されており,誰でも使える下地が整ってきている2).
そこで本稿では,熱レンズ顕微鏡の原理と装置,さらに医療分野への応用例について紹介する.
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