今月の主題 認知症の動的神経病理
巻頭言
認知症の動的神経病理
村山 繁雄
1
Shigeo MURAYAMA
1
1東京都老人総合研究所高齢者ブレインバンク
pp.1083-1084
発行日 2006年10月15日
Published Date 2006/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100724
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認知症は,dementiaの和訳として使用するよう,厚生労働省関係者より指導されており,新しい言葉で耳慣れない部分もあるが,認知機能の正常よりの逸脱が,本人の日常生活に障害をもたらしている状態と定義される.したがって,この状態は,いわゆる本人の病前の状態,ならびに本人をとりまく社会環境において,影響を受けるわけである.また時間軸で行くと当然ながら,連続性の変化を示す.したがって,認知症の診断は,本人の置かれた状況での許容域値を超えたときに,下されることになる.
これは,癌と前癌状態と一部共通する部分があるが,単一遺伝子である程度規定されるものと異なり,ゲノムと外環境の両方が関与する点で,癌とは位相の異なる,手強い相手といえる.さらに問題なのは,認知症の診断のために,脳生検をすることは,今でも一部の国では行われているが,少なくともわが国では現実的ではなく,剖検を得ないと確定診断を下すことができない.さらに,脳は他の臓器に比べ,ブラックボックスの部分が大部分といっても過言ではない.取り出された脳をいかに形態学的に詳しく検索しようと,その脳が呈していた臨床症状のすべてを抽出することは不可能である.
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