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1.はじめに
近年,生体の感染防御などの抗酸化制御システムを逸脱した,強い酸化力を有する活性酸素種(ROS),活性窒素種(RNS)やフリーラジカルなどが,生活習慣病などの疾患に関与することが報告され,大きな関心を集めている.酸化ストレスは,生体内の酸化力が抗酸化力を上回った状況と定義され,DNA,蛋白質,脂質などに直接反応して酸化損傷を与え,さらに,その酸化損傷物質は細胞内情報伝達などのシグナル分子として機能することも明らかにされている.
酸化ストレスマーカーには,ROS,RNSやフリーラジカルおよびその代謝物,さらに,核酸,蛋白質や脂質の酸化損傷物など数多く報告されている1).これらのマーカーを使った酸化ストレス評価は,酸化ストレスの種類や強さ,傷害の進行度を反映したものであり,種々の疾患の予防医学的観点から重要である2).酸化ストレス応答は個体差や生活環境による変動があるため,マーカー濃度の経時的変化の観察が重要であると考えられる.現在,マーカーの分析には,おもにHPLC, ELISAや比色キットが用いられているが,煩雑な操作や長い測定時間に課題がある.
筆者らは,半導体微細加工技術により作製したマイクロ流体デバイスを利用する迅速なアッセイ法の研究開発を行っている.例えば,分離分析のマイクロ流体デバイス化により,物理的な,試料,試薬や廃液の少量化のみならず,化学的な,界面反応や伝熱の迅速化および分離能の大幅な向上が原理的に可能となる.ここでは,典型的なRNSである一酸化窒素(NO)の代謝物および,8-ハイドロキシ-2′-デオキシグアノシン(8-OHdG)などのDNA酸化損傷代謝物の簡便かつ迅速なアッセイ法を報告する.
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