今月の主題 キャピラリー電気泳動法
話題
キャピラリー電気泳動法の考古学への応用―文化財科学のできること
佐々木 良子
1,2
Yoshiko SASAKI
1,2
1京都工芸繊維大学ベンチャーラボラトリー
2奈良文化財研究所保存修復科学研究室
キーワード:
文化財
,
染料
,
材質分析
,
分析化学
Keyword:
文化財
,
染料
,
材質分析
,
分析化学
pp.989-997
発行日 2005年9月15日
Published Date 2005/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100248
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1.はじめに
近年,三内丸山遺跡(青森県),加茂岩倉遺跡(島根県),飛鳥池古墳・キトラ古墳(奈良)など,遺跡の発掘結果が報じられることが多く,その発掘遺物の分析・保存に当たり,様々な科学的手法が用いられていることもよく知られるようになってきた.遺跡が発見されると,その遺跡や遺物が歴史的にどのような意味をもつのか,すなわち出土した遺物について,その時代を推定し,材質や作製技法より作製の目的や製作者を考えるのが,考古学を含めた歴史学の役割である.文化財科学は,遺跡の探査,年代測定,遺物の材質分析,保存処理の分野で貢献している1,2).14C年代測定法,年輪年代分析法などの年代測定については,弥生時代の開始をめぐって近年考古学会などで論議がなされている3).また文化財保存科学の成果が遺構の硬化や転写,更に遺物のさび取り,脱塩,樹脂による補強などの技術として用いられており,例えば,地層の剝ぎ取り面の展示として博物館でみることができる.最近ではこのような技術に日本古来の装こうの技術を取り入れ,キトラ古墳の壁画の剝ぎ取りを行っている.このように,現在では考古学を含む歴史学の調査・研究に文化財科学という学問領域が貢献している.ここでは保存・展示の基礎となる“遺物の材質分析”について分析化学的アプローチを紹介する.
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