増刊号 図解 診療基本手技 第2集
身体所見のとり方
腹部
小泉 俊三
1
1天理よろづ相談所病院・腹部一般外科
pp.60-63
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909650
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腹部の診察にはいつも何がしかのあいまいさが付きまとう.あいまいなものだからつい丁寧な診察は省略して,“最新”の画像診断法で「答え」を知りたくなるし,腹壁の向こうにある臓器の中のこまごまとした変化を知るのに超音波やCTにかなうはずもなかろうと考えてしまう.盃一杯の腹水も見逃さないという名人芸的な診察術がすぐ自分の身に付くとも思えないし,そのことにどれほどの意義があるのかと反問したくもなる,といったところが近年の一般内科医の偽らざる気持ちではなかろうか.いくら「問診と診察が診療の基本」といわれても,腹部の診察所見のこのあいまいさ(fuzziness)が画像偏重の弊害を助長しているのは事実である.
とりわけ,超音波診断装置が簡便に扱えるようになった結果,聴診器が耳の延長であったように超音波プローブは触診する手の延長と見なされる傾向がある.事実,研修医諸君の間でも,問診・診察技法の研修と同様,超音波検査の腕も磨きたいとの要望は強い.
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