特別寄稿
米国病院界におけるバランスト・スコアカード—1.視点枠組み
荒井 耕
1
1大阪市立大学大学院経営学研究科
pp.396-401
発行日 2002年5月1日
Published Date 2002/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903533
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
米国病院界では,特に1980年代末以降,マネジドケアによる競争の激化に対処するために,競争能力を高めるための戦略的な経営管理システムが必要とされてきていた.また,経営管理者による財務面・効率面中心の経営管理と現場医療職による「医療の質」の管理活動とを統合し,経営管理者および現場医療職が病院の多様な業績側面を包括的・体系的に把握・管理する必要がでてきていた.加えて,対外的にも病院の包括的な業績を公開し,包括的な情報に基づいた医療選択を可能にすることが求められるようになってきていた(注1).
こうした中,一般産業界でのバランスト・スコアカード(balanced score card;BSC)の議論および実践の活発化の影響を受けて,1990年代後半以降,米国病院界にBSCの導入事例が多く見られるようになってきている.そこでは,医師・医療職員および経営管理者の戦略的方向への統合1),病院業績への医学的・財務的ドライバーの影響の理解・学習1),病院内外の顧客への価値・エネルギー提供の改善2),因果連鎖に基づいた戦略の実行3),重要領域の明確化と焦点を当てた監視3),戦略と目標と業績評価の一貫性のある統合4),品質管理能力の向上5〜8),医療サービスの価値情報に基づいた顧客による医療購入選択とそれを前提とした病院による業績のマーケティング力の向上3,9,10),といった多様な期待がBSCに対して寄せられている(注2).
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.