医療従事者のための医療倫理学入門
22.遺伝子診断に関する倫理的問題—遺伝性神経難病の遺伝子カウンセリングを通じて
藤村 聡
1
,
浅井 篤
2
,
大西 基喜
1
,
福井 次矢
3
1京都大学医学部附属病院総合診療部
2京都大学大学院医学研究科社会健康医学系攻医療倫理学
3京都大学大学院医学研究科臨床疫学
pp.987-989
発行日 2001年11月1日
Published Date 2001/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903418
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〔ケース〕
18歳の女性Aさんが脊髄小脳変性症の遺伝子検査を受けたいと来院した.Aさんの父は遺伝性脊髄小脳変性症(常染色体優性遺伝,おおむね20歳代以降に発症)と遺伝子診断で確定診断を受け現在寝たきりの状態であるという,Aさん自身には未発症であるが,この病気が常染色体優性遺伝であることを最近知った.父親の主治医からは「この病気は遺伝性の疾患であるが,必ずしも遺伝しない」と説明を受けているが,自分も保因者ではないかとの心配が募り,父親の入院している施設での遺伝子検査を希望した.いったんは遺伝子診断を行う予定になったが,遺伝カウンセリング制度が整ってないとの理由で,この施設では遺伝子検査はできないといわれた.Aさんは強く遺伝子検査を希望していたが,父親の主治医は未発症で保因者の可能性のある未婚女性に対する遺伝子診断の対応に苦慮し,遺伝カウンセリング体制のある某大学医学部附属病院へ紹介した.このようないったん発症すると治療法のない遺伝性疾患の事例に,われわれ医療従事者はどう対応するべきだろうか?
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