医療従事者のための医療倫理学入門
18.終末期医療における倫理的決断(6)—自発的安楽死と医療従事者の良心的拒否について
浅井 篤
1
,
大西 基喜
2
,
福井 次矢
3
1京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療倫理学
2京都大学医学部附属病院総合診療部
3京都大学大学院医学研究科臨床疫学
pp.645-647
発行日 2001年7月1日
Published Date 2001/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903331
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安楽死は本来「良い死」を意味する.しかし,医療倫理学・生命倫理学の領域では,患者の要請により,医師が致死量の薬物を患者に直接投与するなどして患者を積極的に死に至らしめること,つまり,自発的積極的安楽死(以下,自発的安楽死と記す)を意味することが多い.
オランダでは現在,耐え難い苦痛に苛まれている患者が,十分に状況を理解した上で明確に死なせて欲しいと繰り返し要求し,かつ,2人の医師が,患者の苦痛は不可逆的で苦痛緩和のための手段が存在しないと判断した場合,医師が自発的安楽死を施行しても告訴されない制度を取っている.米国オレゴン州では医師による末期患者に対する自殺幇助が認められ,また,豪州北準州では1996年7月から1997年3月までの9か月間のみ,自発的安楽死と自殺幇助が合法的に行われ,4名の末期患者が自発的安楽死による死を選んだ.また,1990年代に行われた自発的安楽死に関する臨床研究は,幾つかの国の医師が違法にもかかわらず,実際に自発的安楽死を行っていることを示唆している1〜3).
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