民間精神病院はいま—21世紀への展開・10
高嶺病院—アルコール依存症への当院の取り組み
橋本 隆
1
1医療法人信和会高嶺病院
pp.1026-1029
発行日 1998年11月1日
Published Date 1998/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541902554
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過去の精神科医療は,社会から閉鎖的イメージでみられ,社会の偏見にさらされてきた.アルコール依存症(以下,ア症と略)医療に関してはそれはさらに強い.ア症が疾病であり,回復可能であるという事実は医療よりもむしろ自助グループから発信された歴史がある.さらにわが国のア症治療は,ア症特有の複雑さに加えて,医療と自助グループとの主導権争いでうまく発展できなかったところにこれまでの不幸があるのではなかろうか.医療と患者グループとの協調関係は,今後のアルコール医療の前途を左右する課題であろう.
こうした中で当院は,地味な努力の積み重ねで着実な成果を上げることができないかと模索する医療を目指している.アルコール医療は,アルコールをやめるための知識だけでなく,心身の症状改善という視点で,人の転機のきっかけを目指すことではなかろうかと考えている.筆者は,地域ではあるが医療者側からア症の治療にかかわり,一定の成果を上げることができた.この概要を紹介する.
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