癒しの環境
感情が出せる環境
沼野 尚美
1
1姫路聖マリア病院
pp.450-451
発行日 1997年5月1日
Published Date 1997/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541902109
- 有料閲覧
- 文献概要
入院してから本当の病人になった,病人らしくなったという言葉を患者からよく聞く.それはなぜだろう.入院生活の何がそうさせるのだろうか.考えられる要素はいろいろあるが心にぜひとどめねばならないことは,病院の環境が患者の心理面に大きな影響を与えていることである.例えば,入院すると規則の多い病院生活に追いやられ,外界の世界との直接的なつながりを失い,日常生活や社会生活から逸脱した敗北感,孤独感,坐折感を味わったりする.また,隔離された情報源の少ない静止的な状況の中で,身体の症状に関心が集中して敏感になり過ぎたり,単調な入院生活が長く続くと,思いが過去へとさかのぼり昔の過ちを後悔したり,よき思い出を懐しく回顧して涙したりする.それゆえに,病の状況がよくないならばなおさら,将来について何かを計画したり,希望したりするよりも,不安を感じて未来を考える意欲を失うのである.
入院することによってみられる患者のこれらの心の動きに,病院が持つ環境も大きく作用していると思われる.そして良きケアを目指すならば,患者の持つ感情をないがしろにしてはならず,患者の心や感情を大切にする環境を求めていく必要がある.病院という特殊な環境のもとで,患者の感情を大切にするために,どのような配慮が可能なのであろうか.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.