病院進化論・5(最終回)
進化の加速と寿命の短縮化
古川 俊之
1
1国立大阪病院
pp.966-970
発行日 1996年10月1日
Published Date 1996/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901937
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病院建築の耐用年限(寿命)の短縮
記録を繰ると,日本の代表的な総合病院では,母屋が戦後2〜3回は改築されている.戦後の病院は廃屋のようなありさまであったし,復興期に建てられたのも安普請であったといえばそれまでであるが,実は時代とともに病院建築の寿命が短縮しているのではないか? その根源には医療の進化の加速が,施設・装備や建物の更新を不可避のものにしているようである.例えば施設階(inter-stitial space)は,病棟のフロア間にかなり高い空間を設け,電力,上下配水,各種医療ガス,さらに搬送装置を収容する工夫で,将来の装備の新規導入ばかりか増築に当たってさえ,改築なしに対応できるといわれた.もちろん欧米の新築病院で取り入れられた.ところが病院の重装備化が急速に進んで,施設階の役割は今では搬送システムのみとなった.日本で施設階はまだ神戸中央市民病院と東京大学附属病院しかないのに,技術の進化と新旧交代の勢いが先行している.
日本では鉄筋鉄骨コンクリート製の建造物の耐用年限はおおむね50年と決まっている.昨年の阪神淡路大震災を機に耐用年数を調べると,50年どころか1971年と1981年の2回にわたって建築基準法が改正され,それぞれの時期より以前の建造物は耐震性に疑問が呈されている.これまで紹介してきた海外の病院建築の中にも,地震国の日本では許されない構造のものもある.
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