厚生行政展望
「薬害エイズ」問題について
厚生行政研究会
pp.682-683
発行日 1996年7月1日
Published Date 1996/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901863
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罪と罰
昨今,厚生省に勤務している職員やその家族は肩身が狭い思いをしている.くる日もくる日もわずかな残業手当でお国のために深夜まで働いたあげくに,世間からは「悪い奴ら」みたいな評価しかされないのではやりきれない.それでも彼らは,公務員としての職責を全うするため,日々黙々と働いている.欧米型国家とは異なり,この日本の発展を支えてきたのは,「健全な」議会制民主主義でもなく,「中立公正な」世論(マスコミ)でもなく,綿密かつ周到な行政を司ってきた官僚なのだ,という自負こそが,彼らの滅私奉公精神の原動力なのである.
「薬害エイズ」問題で焦点のひとつとなっているのは昭和58年から60年にかけての行政判断の是非である.相反する決定に伴うそれぞれのリスクに対して行政判断と行政責任はいかにあるべきか,という論点は重要なテーマであり,この機会に十分に掘り下げるべきところであるが,残念ながら世間の関心は,「真相」解明という名のもとでの製薬メーカーと官僚と政治家との癒着構造の追跡ばかりに向けられている.それはそれでマスコミに任せておくとして,厚生行政のやぶにらみ論評を10年以上もやってきた厚生行政研究会としては,冷静にこの問題を論評してみたい.なお,この問題は,官僚の信頼を著しく失墜させた某省の不祥事とは質的に異なる問題である.
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