主張
介護と病院
O
pp.799
発行日 1994年9月1日
Published Date 1994/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901314
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高齢化の進展はこれまでにも病院医療に深刻な影響を与えてきたが,最近に至って社会保障の基本的な枠組をも変える課題として介護の問題が浮上してきた.すなわち,従来の年金と医療に加えて,介護のための保障制度を導入しようとする動きである.一般の傷病のリスクと要介護のリスクは確かに様相が異なっている.従来はこれらをすべて医療とみなして対応してきたのであるが,救命・治療の医療の論理にそぐわない部分も少なくなかったと言える.介護保障制度の導入によってこのような矛盾が少しでも解消されるのであれば,病院の立場からもこれらの動きに十分な関心を持って見守る必要がある.
介護という負担が発生した時,通常まず家族によって支えられるが,場合によってはかなりの部分が病院によって対応されてきた.これは特例老人病院に限らず,一般の病院においても社会的な要因で入院を継続する事例は少なくなかったことは今さら言うまでもない.これは患者も家族も病院に入院するという形を希望し,病院も保険診療の枠の中で比較的容易に受け入れが可能であったことによる.一般的には医学的管理のある介護はむしろ望ましいと言わなければならないが,医療の論理で介護に対応する矛盾や在院日数の長期化などにより,病院医療はその機能や経営基盤などに大きな影響を受けたことは紛れもない事実である.
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