建築と設備・98
南欧とオランダの医療施設—日本病院建築協会第14回海外病院視察団報告
河口 豊
1
1国立医療・病院管理研究所施設計画研究部
pp.761-766
発行日 1994年8月1日
Published Date 1994/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901303
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南欧とオランダ
1993年9月10日出国し,同月24日帰国の14日間,27人の視察団であった.訪問都市(図1)の南欧は,西洋医学発祥の地ギリシャ,それを受けたローマは,その後の暗黒の中世ではアラビア医学の発展に地位を譲るが,医学の中心地であり,サレルノ医学校からのイタリア医学はルネッサンスを経て欧州大陸へ広がった.またマドリッドも中心都市であった.しかし近代に入り,中部欧州大陸,英国,米国へと主役の座は移り,今日では医学的にも施設的にも先進国とはあまり認識されていない.
一方,量から質への転換が迫られている我が国において,質の中味を考える時に米国や北欧の施設もさることながら,もう少し風土や文化との関わりで考えたい.「日本と欧米先進国の医療施設の違い,それは面積と人手である」の改善もさることながら,もっと独自性があってよいのではないか.さらに広くは医療・福祉に対する考え方の違いもある.医療法でうたっているように「病院は傷病者が科学的でかつ適切な診療を受ける」場であることは言を待たない.しかし医学は科学であるが,医療は医学の社会的適用といえ,まさに文化といえよう.
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