MSWの相談窓口から
悩める金銭管理—求められる専門的対応
森山 正治
1
1名古屋市立東市民病院
pp.637
発行日 1994年7月1日
Published Date 1994/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901276
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こたえぬ妻子
杖をついたA氏71歳が相談室を訪れたのは,脳腫瘍の治療目的で入院する直前の今年1月半ばのことだった.東京で商売をしていたA氏には妻と2人の男の子がいたが,妻子は昭和40年頃にA氏の放蕩のせいで家を出た.籍は抜いておらず,放置されている.大阪に移ったA氏は他の事業を始め婚外子を一人もうけたが,現在まで顔を合わせたことがない.事業に失敗し10年前より当病院近くの繁華街に転居し,少々の蓄えと年金でひとり暮らしをしている.
主な相談は,手術をする場合に同意人が必要であること,ねたきりになった場合の援助(家賃を払うなど)者がいないこと,そして死亡したときの後始末のことだった.筆者は,同意人には細々と手紙のやりとりをしているらしい外子に依頼すること,ある程度の金銭管理は筆者で対応できること,また万一のことを考えて妻子の住所地を筆者の側で探すなど提案した.その後状況は急展開し,放射線治療に入って意識障害が現れ,筆者はあわてて戸籍の附票をとりよせた.危篤状態に陥り妻子に電話を入れたが,「亡くなったら考えます」という返事.外子も婚外子であるがゆえ動きづらく,なかなか来院してくれない状態が続く.
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