講座 法律の知識
金銭貸借の問題
渡辺 道子
pp.21-23
発行日 1957年7月10日
Published Date 1957/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201447
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
「久し振りに訪ねて来た女学校時代のお友達から,今ここで少しお金を注ぎこめば,夫の仕事が成功するのだが,資金が足りないから少し貸してほしいと泣きつかれ,結婚資金として貯めていた虎の子の5万円を貸しました.仲の良い友達だったし,真面目な人なので,別に借用証も貰わずに一月後には必ず返すという言葉を信じていました.ところが一カ月過ぎても返してくれないので,催促の手紙を出しましたら,も少し待つてほしいと返事をよこしましたが,それきり返してもくれず,こちらの手紙に対して返事もくれなくなりました.借用証もとつてないとなると返して貰うことは困難でしようか.」
「借用証を貰つてなくとも,借りた人が借りた覚えはないと否定しない限り,貸した事実は判ることですから心配はありません.それにあなたの催促の手紙に対して返事をよこしていれば,その手紙は借りたことを認めていることの一つの証拠になります.私たちウエツト族は,親しい人にお金を貸すのに借用証書を書かせるということなど水臭いと思いがちですが,貸した方も借りた方もそのお金に対して責任を持つ意味で,矢張りキチンと書面を作つておいた方がよいですね.お金の貸借に変な人情を出すと,却つてあとで気まずいことが起り,友情を失つてしまうことにもなりかねません.」
Copyright © 1957, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.