精神科医療 総合病院の窓から・3
コペンハーゲン市民病院のこと
広田 伊蘇夫
1
Isoo HIROTA
1
1同愛記念病院精神科
pp.524-525
発行日 1991年6月1日
Published Date 1991/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900945
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前回は郡立Albany病院に,アメリカではじめて精神科病棟を設置し,その運営にあたったM.Mosherの事蹟にふれた.ところで大学病院を除き,総合病院のなかで精神科病棟が最初に運営されたのは,世界の何処であったかについて,私は正確な資料を得ていない.ちなみに,わが国で訳本ではなく,本格的な精神医学の教科書をはじめて著したのはすでに記した呉秀三であるが,その精神病学集要(1895年)には,ヨーロッパでみる精神病院の形態、はさまざまであり,「これを市内精神病院と村落精神病院とに区別したのはW.Griesinger (註;ベルリン大学神経・精神科教授,1868年没)で,市内精神病院とは単独の精神病院,または一般病院と合して市内に設立されているものをさす」との記述がある.この説明からすると,1868年以前に,ヨーロッパではすでに総合病院精神科病棟が存在していたとみることはできる.この点について,私がたどり得た限りではデンマークの首都,コペンハーゲンの市民病院(Commune Hospital)が最も古いもののひとつ,といえそうである.その概要については1902年,イギリスで発行されているMental Science誌上にKund Pontoppidonが報告している.Professorの称号がついているところからすると,彼はコペンハーゲン大学の医学部教授だったようである.
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