精神科医療 総合病院の窓から・1
いま,なぜ総合病院か
広田 伊蘇夫
1
Isoo HIROTA
1
1同愛記念病院神経科
pp.338-339
発行日 1991年4月1日
Published Date 1991/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900899
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[記すにあたって]
筆者はまず,大学病院,総合病院精神科に在籍し,その後,長期にわたり単科精神病院に身をおき,今,再び総合病院に戻っている.振り返るに,すでに30年を越える年月である.この間の記憶を跡ってみると,他の専門科領域と同様に,精神科医療のフロントもまた,変化の波に洗われてきたとの感が強い.たとえば思いつくままに,いくつかの疾患の変貌について記してみると,かつてその生物学的な原因,症状,経過,転帰,および解剖所見があきらかであり,それ故にこれをモデルとして精神障害を考えようとする時代をもっていた進行麻痺はすでにほぼ姿を消し,たとえばその昔,筆者自身の手で発熱療法を行った患者が,後遺症としての痴呆を前景にして,わずかに外来診療に現われるだけのものとなっている(ただ,老人痴呆とはいささか色彩の異なるこの痴呆は,筆者にとって臨床的関心の強いものではあるが).そしてまた,なによりも精神科医療の主役でありつつも,時としてみせる華々しい興奮のために,医療者を悩ましつづけ,精神科医療を他の専門科領域から疎外させる一因でもあったとみられる精神分裂病の症状は,すでに多くの人々が指摘するように,原因はなお謎に包まれてはいるものの,確実に軽症化の方向を跡ってきている.
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