特集 病院医療の質の改善
わが国の病院機能評価のその後
藤咲 暹
1
Susumu FUJISAKI
1
1宮城県地域医療情報センター
pp.480-483
発行日 1991年6月1日
Published Date 1991/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900936
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
わが国の医学の進歩と医療技術の発展は,長寿社会の到来と高度医療の普及をもたらした.高齢者の増加は医療需要を増大させ,医療の高度化は医療費用の増加を招いている.一方で,経済成長による生活水準の向上と健康教育の普及によって,国民の医療への関心が高まり,その医療ニーズを量的充足から質的充実へと転換させることになった.
医療を取り巻く社会的条件の変化に対する医療の適応は必ずしも十分ではなかった.特に医療の提供体制は,高齢者の慢性疾患への対応が重要な課題となっている現在に至っても,急性疾患対応時代とそう大きく変化していないといえる.国民の医療ニーズと提供側の医療理念との乖離が進んでおり,国民の医療に対する期待はしぼみつつあるといえよう.その具体例を挙げれば,患者一人ひとりの個性に対応した医療が不十分であり,診断治療に偏重しすぎて療養生活が軽視されており,また,長期入院患者の処遇に必要な費用が投入されておらず,特に,健康保険の診療報酬体系は画一的な単一のパターンのままであるなど,国民の医療ニーズとのギャップが拡大されてきている.
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.