活動レポート
在日留学生のための精神衛生活動の実践—東京農工大学「留学生広場」の試み
江川 緑
1
,
鉅鹿 健吉
2
Midori EGAWA
1
,
Kenkichi OGA
2
1東京大学精神衛生学教室
2東京農工大学保健管理センター
pp.194-197
発行日 1990年3月15日
Published Date 1990/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900055
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●はじめに
わが国への留学生数は,1982年を境に急激に増加しつつあり,1988年5月現在2万5千人を超え,1981年の約3.6倍となっている(図1)1).政府は21世紀初頭までに留学生10万人を受け入れるとの政策を打ち出しており,今後留学生数はますます増加するものと思われる2).国際的なヒトの移動に伴う諸現象は,精神衛生学のみならず,国際関係論,社会心理学,教育学などの分野でも研究されている.ヒトの国際的移動そのものが多面的な現象であるため,学際的アプローチも試みられている3).精神衛生学では,特に移動と適応の問題に焦点があてられ,わが国では従来,海外に出かける日本人が主な研究対象であったが4,5),最近では在日外国人の適応に関する研究も増えつつある6).
筆者の一人江川は,1985年,カナダ・バンクーバーを訪れ,ブリティッシュ・コロンビア大学精神科教授であった林宗義先生のご厚意で,エスニック・マイノリティの適応上の問題およびその援助活動について見聞を広める機会を得た.日本人学生の異文化体験,異文化適応の問題を,主に送り出し国側の視点から研究していた筆者にとって,受け入れ国側の援助活動に実際接したことは,非常に新鮮な体験であった.
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