辛口リレーエッセー 私の医療論・病院論
病理医の院長が思うこと
菊池 昌弘
1
Masahiro KIKUCHI
1
1福岡大学病院
pp.852
発行日 1990年10月1日
Published Date 1990/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900751
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これまで直接患者にふれることのなかった病理医が院長の椅子に座ること自体奇妙なことかもしれないが,とにかく新しい世界のルールに驚いている.これでも卒業後1年間はインターンとして診療に関与したことはある.もちろん当時はまだ医師としての免許もなく診療の手伝いであり,現在と立場が違うので比較は無理かも知れないが時代の変化は著しい.診療の内容,レベルの向上,更にはコ・メヂカルスタッフの占める役割の増大は,医療が医者だけでなく,多くの部門で働く人々の協力の集積から成り立っていることが,実感として受け取られる.
更に,医療がほぼ完全に保険制度のなかに組み込まれており,その制約のなかでなされていることを肌で感じる,これまでも,現在の保険制度のもとでは,医療に対する制約が大きく,充分な医療行為がなされないとしばしば耳にしていた.確かに現実には,現在の保険制度が多くの矛盾を内在していることも明らかである.特に保険の体系が基本的には出来高払いになっていることが,多くの無駄な医療行為を進め,医療としての本質が歪められていることも確かである.つまり医療行為に対する評価はその作業量をもとに計量的に評価されているのであって,本来の医療行為に対する効果は殆ど評価されていない.
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