主張
医療経済実態調査結果の比較対照について
I
pp.817
発行日 1990年10月1日
Published Date 1990/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900744
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通商産業省産業政策局編「昭和63年度版わが国企業の経営分析」によると,全産業における従業員1人当たりの年間売上額,経常利益額はそれぞれ82,663千円,3,188千円である.しかるに医療業においては,中央社会保険医療協議会(中医協)による平成元年6月医療経済実態調査の概況(医療機関調査)の数値を基礎に単純に12倍すると,一般病院で,従業員1人当たりの年間売上額は11,498千円である.この数値は全産業平均の年間売上額の約8分の1であり,非常に低い.労働集約産業といわれるサービス業,飲食業と比較しても,従業員1人当たりの売上額はそれぞれの約5分の1,3分の1であり,医療はまさに労働集約産業の典型ということができる.
従業員1人当たりの経常利益をみても,医療業の394千円という額は全産業の3,188千円に比べて8分の1であり,この絶対額の低さは今日の病院の貧困を象徴的に表している.中医協の実態調査は,利益率のみに言及して,一見,病院経営は順調に行われているかのような印象が与えるが,この従業員1人当たり経常利益額は明らかに病院経営のゆとりのなさを示すものといえる.因みに上記サービス業,飲食業は売上高経常利益率が約8%で全産業の中でも高い方の範疇に入ることから労働集約型イコール高付加価値の経営が行われているのである.
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