医療従事者のための患者学
“生”への希求(その1)
木村 登紀子
1
Tokiko KIMURA
1
1聖路加看護大学心理学
pp.339-343
発行日 1990年4月1日
Published Date 1990/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900619
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2年余りの間,細々と連載してきた本シリーズも,いよいよ最終段階である.本号と次号では,まず,「どんな患者も“生”をこそ希望している」,「人間は,相互により良い“生”を求めている」という視点で,患者や家族,あるいは患者(家族)と医療従事者の関係を捉える.そして,人間が希求する“生”とは,その中身が何なのかを問うことを通して,患者学の中軸となる課題を模索し,本シリーズの締めくくりとしたい.
なお,この「“生”への希求」は,先に3回にわたり考察した“喪失”すなわち「生きることへの問いかけ」,「共にあゆむ」,「超えて生きる」とともに,本シリーズの第5部を構成している(全体の構想図については,「病院」48巻6号に記載).この第5部では,医療の場を,「人間の“生きる場”」として捉え,主として人間学的視点から,患者およびその家族の特質について考察を進めている.喪失に際して患者や家族が直面する心理的問題は多種多様であるが,その中で,「人間としてのあり方の根本問題に関わる問い」にことさら焦点を絞ったのは,人間学的視点を中心に置いたからである.
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