医療従事者のための患者学
“生”への希求(その2)
木村 登紀子
1
Tokiko KIMURA
1
1聖路加看護大学
pp.435-439
発行日 1990年5月1日
Published Date 1990/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900646
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問いの旅としての“患者学”
“患者”を理解するとはどのようなことか,患者の“こころ”を真に理解し援助するには,どうすれば良いか.これが,筆者の視点から見た“患者学”への問いの出発点であった.過去2年余にわたり,しばしば心理学の枠をはみ出しながら,仮称“患者学”を模索してきたが,問いは深く広くなるばかりで留まるところを知らずの感がある.しかし,次号をもってひとまずシリーズを閉じる予定である.
患者学の展開の過程は,「患者を理解し援助するには,どのような理念や知識・技能・態度が必要であり,かつ適切で有効か」と問うていく作業であった.そして,その問いは必然的に「なぜ,それを必要または適切であると判断するのか」と筆者に問い返してくる.それゆえ,筆者自身の患者観を明らかにしなければならず,それは取りも直さず,人間への見方を問われることでもあった.また,患者をより良く援助するためには,患者だけでなく,医療従事者を含む“医療の場のヒューマニティ”の回復を問題にする必要があった.そして,それへの問いは,往々にして身近な職場や家庭での筆者自身のヒューマニティの実現や人間としての在り方を厳しく問い返してきた.
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