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■はじめに
社会の高齢化によって進む医療介護生活ニーズの複合化に対応するためには,病院も複合的なサービスを提供できる体制を整備することを求められる.その方法として本連載で紹介してきた事例としては,日本海総合病院のような連携推進法人の形成1),博仁会志村大宮病院2,3)や大誠会内田病院4),あるいは豊生会東苗穂病院5)のような医療介護生活複合体の形成がある.歴史的に小規模な中小民間病院が地域医療を担ってきた日本の場合,米国のCCRC(Continuing Care Retirement Community)やACO(Accountable Care Organization)のような大規模な複合体は形成しづらい.特に介護事業者の場合,中小零細事業者が多く,また株式会社組織の形態をとるものが少なくないことから,医療介護を総合した連携推進法人を形成することが容易でない社会風土的な条件がある.
しかし,医療介護生活ニーズの複合化は,水平・垂直両方向の連携を求める.国も連携を推進するために,診療報酬や介護報酬で各種加算を設定しているが,なかなか連携が進まないのが現状である.介護保険制度発足当初,二木立氏(前日本福祉大学学長・名誉教授)は連携のための調整コストの高さが障害となり異なる事業者の存在を前提としたネットワーク型のサービス提供体制は国の期待通りには進まず,複合体が複合ニーズに対応したサービス提供体制としては優位になると予想した6).そして,現実は二木氏の予想したとおりになった.
高齢化の進行は,急性期入院医療も巻き込んだ医療介護生活の連携を要求するようになっている.その背景には肺炎や股関節骨折,心不全の増悪などの高齢者救急の増加がある.そして,こうした介護と急性期医療との連携の必要性はCOVID-19の流行により顕在化した.2024年度の診療報酬および介護報酬の改定では,介護施設がその医療ニーズを支援する病院と契約することで,双方に加算が付く仕組みが導入された.そして,医療側ではその受け皿として地域包括医療病棟が新設された.この地域包括医療病棟は特に今後急増する高齢者救急の受け皿として期待されている.しかし,この仕組みについては,高齢者救急であっても救急は救急であり,看護配置基準の低い地域包括医療病棟では,それを受けきれないのではないかという意見もある.
いずれにしても,高齢化による医療介護複合化の進展は医療・介護施設間の連携を求める.ただし,その在り方は地域におけるこれまでの医療提供体制の状況に依存する.本稿では,医療・介護施設とのアライアンスを構築することで,医療介護複合ニーズへの対応を行っている済生会熊本病院について紹介する.
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