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■崖っぷちの病院
士別市は北海道の北部,札幌から200kmほどの寒冷な気候の農業地帯にある地方小都市である(図1).人口減少が進んでおり,かつては5万人以上を有したが,2019年度末には18,000人台となっている.士別市は札幌市と同じくらいの面積を有するが,そこに病院は当院一つしかない.士別市立病院はピーク時の2002年には常勤医師が29人おり,急性期診療を中心に年間で外来患者25万6,290(1,042/日)人,入院患者9万1,899(252/日)人を診ていた.また入院病床も307床を有し急性期を中心とした医療を提供してきたが過疎化による患者数の減少,常勤医師の激減により非常に経営状態が悪化し,存続の危機にさらされた.
典型的な北海道の地方小規模都市である士別市は過疎化,少子・高齢化の影響をもろに受けてきた.また地域医療という点では,2004年度に始まった新医師臨床研修制度をきっかけに当院の常勤医師は激減した.2017年度は外来患者約11.6万人,入院患者約4万人と最盛期の半分以下となった.2003年からは,急性期の4病棟体制(199床)とし,医師や看護師確保を通じ,経営の立て直しに努めたが患者減に歯止めがかからず,2007年度末に13億円の不良債務を抱えるまでに経営が悪化した.また,2008年度から「一般会計繰入金」(補助金)は10億円を超え,2016年度は12億円となった.士別市の一般会計全体(2016年度)は約195億円,市税収入は23億円であった.その中から病院の繰入金(補助金)に12億円を使うとなれば,このままでは病院の経営どころか,市全体の財政が危うい,まさに“崖っぷち”の市立病院であった.
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