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1991年に創設された本賞は31回目を迎える.応募対象は過去3年間に竣工した施設であるが,コロナ禍により2020年度の募集を中止した影響で,今回は2017〜2020年度の4年間に竣工した作品を対象とした.コロナ禍の2020年度に竣工したものも応募対象となったため応募の増減が心配されたが,応募作品の総数は31作品(うち病院20作品,診療所3作品,保健・福祉施設など8作品)とそれほど変化はなかった.病院,診療所,保健・福祉施設などの比率も大きくは変わらなかった.近年は設計技術の向上により総合病院や単一機能の福祉施設は設計のセオリーや最適解が生まれ,建築賞に相当する新しい建築像を提案しにくくなったと言われながら,今回も5つの施設に賞が与えられた.国立循環器病研究センターと山梨県子どものこころサポートプラザは複合施設ゆえの相乗効果が期待できるような構成で,最近の医療福祉政策に求められる複合化(=合理化)にとどまらない点が評価された.残りの3作品は小規模かつ単一機能の施設であり,建築の持つ力そのものが施設の運営や在り方に影響を及ぼしたことが評価されたと言え,設計者は運営者の意図を汲み取りながらまだまだ新しい建築像を生み出す力を持つことを見せつけられた.
近年は大規模施設の整備において,デザインビルドやPPP(官民連携)など資金調達段階から多くの組織が一体となって事業に取り組む事例が増えている.今回の応募作品の中にも都市型再開発の一区画をなす施設もあり,医療福祉施設がまちづくりや地域整備の中心として大きな役割を期待されていることもうかがえ,新しい潮流を感じることもできた.選考委員は今年から,秋山正子(マギーズ東京),河合慎介(京都府立大学),小松本悟(足利赤十字病院),鳥山亜紀(清水建設),南部谷真(神経研究所),山口健太郎(近畿大学),筆者の7名の新体制となった.最終的に以下に示す5作品について建築賞の授与を決定し,うち2作品を準賞とした.
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