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■はじめに
いま病院のトップ層やマネジメント層の方々は,頭を抱えていることであろう.何重苦になるのだろう.もともと高齢化に伴う複雑化した治療ニーズが増えているところに,新型コロナウイルス感染症に襲われた.もちろん,財政難にあえぐ国から医療費の増加は期待できない.さらに,2040年に向け労働人口は減る上に,罰則まで付く医師の時間外労働規制が始まる1).現状のままでは,病院は疲弊が高じて,ゆでガエル状態に陥ってしまう.
有効な解決策の一つは,デジタル・トランスフォーメーション(DX)の導入である.DXはデジタル技術により,生活の質を変えることである2).2007年のiPhoneの発売により個人がコンピュータを携帯できるようになり,生活は劇的に変わった.同じように,病院事業もDXを推進することでスタッフ・患者により快適な環境を提供できるはずである.
横須賀共済病院(以下,当院)では,5年前にまずAIを用いた自然言語処理により,音声入力できる電子カルテの開発に取り組み,スタッフの労働量削減と患者へのより良好なコミュニケーションの両立を目指した3〜4).
この事業が軌道に乗り始めた2018年7月に,内閣府からAI開発を目的とする戦略的イノベーション創造プログラム(SIP:Strategic Innovation Promotion Program)として「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」が公募となった5).サブテーマの一つが「AIを用いた診療時記録の自動入力化,インフォームドコンセント(IC)時の双方向コミュニケーションシステムの開発」であり,ベクトルが同一であるため申請して採択された.
テクノロジーの導入により医療者の労働量を軽減し,働き方改革を実現する事業について,その成果を報告したい.
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