連載 医療機関で起きる法的トラブルへの対処法・15
病院内でのプライバシーへの配慮
長谷川 葵
1
1弁護士法人 色川法律事務所
pp.618-622
発行日 2022年7月1日
Published Date 2022/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541211725
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■1 プライバシーとは
病院におけるプライバシー情報としては,カルテに記載されるような診療情報を一番に思い浮かべられると思いますが,カルテについては別の機会に譲ることとし,今回は設例のようにより一般的な患者の情報について検討します.
まず,プライバシーとは何か,ということについては,一定の定義が固まっているものではなく,従来は「私生活をみだりに公開されないという権利★1」だと考えられてきましたが,最近ではより広く,「自己の情報をコントロールする権利」などと捉える向きもあり,判例でも単に私生活上の情報とは言えない情報であっても一定の場合には法的保護の対象となりうると判断したものがあります★2.そして,プライバシーに対する違法な侵害となるかどうかは,基本的には,取得・利用される情報の性質と,情報の取得・利用の目的,取得・利用の態様が適切かなどを総合的に判断して,社会生活を営む上での受忍限度の範囲内かどうかという観点から判断されます.
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