特集 選定療養・評価療養制度のこれから
高度医療をどのように医療制度の中で評価するのか
なぜ選定療養・評価療養制度は改革されなければならないのか
八代 尚宏
1
1昭和女子大学
キーワード:
混合診療
,
医療保険給付範囲
,
初診時選定療養費
,
患者申出療養
,
医療の非営利性
Keyword:
混合診療
,
医療保険給付範囲
,
初診時選定療養費
,
患者申出療養
,
医療の非営利性
pp.588-591
発行日 2022年7月1日
Published Date 2022/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541211719
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
保険診療と保険外診療を併用する,いわゆる混合診療の禁止は,医療の規制改革の大きなテーマの一つである.これは,例えばがんの治療で,欧米では幅広く使われているものの,日本の公的保険では対象外の医薬品を使う場合である.この医薬品の費用を患者が負担することは当然だが,その場合には,本来,公的保険の対象であるがんの検査や,医師の診察費用も含めた保険診療費が全て患者の負担になる.このように,「医療費の全額を公定保険で定められた枠内で行うか,それとも全く保険を使えない自由診療か」の二者択一を迫るのが,混合診療禁止の論理である.
医療保険給付は,国から与えられる福祉ではなく,健康保険料の対価としての給付を定めた「保険契約」に基づいている.公的保険の枠内で,医師が患者にとって必要と考えて医療を提供した場合に,その費用がまったく償還されないことは,保険契約の違反ではないかというのが,混合診療禁止への基本的な疑問である.現行の混合診療の禁止が原則で,その例外の場合を個々に挙げていくポジティブリスト方式を,逆に混合診療は自由が原則であり,必要に応じて例外的に禁止するネガティブリスト方式に改革することが,医師や患者の選択を重視する規制改革の考え方である.
Copyright © 2022, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.