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■はじめに
2021年5月の医療法の改正により,外来機能報告制度を開始して医療機関の外来機能を明確化し,かかりつけ医機能を担う医療機関と医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関(紹介受診重点医療機関)とに大別し,両者の役割分担・連携を促進することが決定された.従来,特定機能病院や地域医療支援病院では紹介率,逆紹介率,連携体制の強化が重要視され,患者の大病院集中を防ぐ努力が払われてきたが,必ずしも円滑とは言えない状況であった.今回,紹介受診重点医療機関を導入することにより,日常の診療はかかりつけ医機能を担う身近な医療機関で受け,①入院治療の前後や,②高額機器・設備等を必要とする医療,③特定の領域に特化した(紹介患者に対する)専門的医療など,重点的に医療資源を用いる時に,これら基幹病院を受診する流れを徹底しようとしたものと思われる.
しかし,都市部と違って医療資源の乏しい地域では,基幹病院自体がかかりつけ医機能も務めざるを得ないことが多く,連携体制の構築が簡単には進まない所が見られる.まして外来機能報告等に関するワーキンググループ(WG)等での検討前に,財政審が定額負担(選定療養費)を高額に上げ,増額分を保険給付から控除する方針を勝手に決めたり,WG後の中医協では推計学的根拠も示さず,十分な協議もせずに,紹介受診重点医療機関入院診療加算や,新たな紹介・逆紹介割合を設定して,これらが低い場合には初診料,再診料を減額することを決定した.このような一方的なやり方では住民・医療機関の理解は得られず,地域医療が混乱する所が多数出現するように思われる.地方では紹介率・逆紹介率が低いために,地域医療支援病院の要件に合致しない基幹病院があり,これらの基幹病院が紹介受診重点医療機関という国の基準を満たしても,地域の医療事情,住民の希望,経営問題等が絡んで手挙げできるのか,微妙なように筆者には思える.こうした病院では医師が過重労働に陥っており,かかりつけ医機能の強化と役割分担,連携体制の推進を図りたいと願っても簡単には進まず,地域の協議の場でも紛糾するように考えられる.
本稿では,全国自治体病院協議会(以下,当協議会)が2021年会員病院に行った地域医療支援病院の指定状況に関する調査と,地域の拠点病院から見た紹介受診重点医療機関を巡る課題,意見等を紹介し1),かかりつけ医機能を担わざるを得ない基幹病院の実情の一端を報告する.
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