連載 医療機関で起きる法的トラブルへの対処法・12
労働組合の要求に対してどのように対処すればよいか
加古 洋輔
1
1弁護士法人 色川法律事務所
pp.360-364
発行日 2022年4月1日
Published Date 2022/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541211666
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■1 はじめに
これからの人口減少社会でよりよい人材を確保するためには,職員の待遇改善が不可欠です.とはいえ,厳しい経営状況では労働組合からの全ての要求に応じることは難しいでしょう.しかし,争議行為にまで発展するとダメージも深刻です.本稿では,労働組合とよい関係を築くために守るべき法的ポイントについておさらいします.
労働組合と労働三権
労働組合は,労働者の労働条件の維持改善などを目的とする団体です.
労働者は,労働組合を結成・運営する権利(団結権),労働者が使用者と団体交渉を行う権利(団体交渉権),争議行為・組合活動を行う権利(団体行動権)という,いわゆる労働三権が,憲法28条で保障されています.正当な団体交渉,団体行動は,刑事上・民事上の違法性が阻却されます.
労働組合に関する諸権利などについて具体的に定めた法律が,労働組合法(労組法)です★1.
労組法上の労働者
労働組合法の保護を受ける労働者(以下,労組法上の労働者)は,労働契約法や労働基準法で定められた労働者よりも広い概念です.
例えば,請負や委任などの契約により労務提供する者も労組法上の労働者に当たる場合があります.また,失業中の者も労組法上の労働者に当たると考えられています.ですので,労働組合の構成員が,現在,病院と労働契約を締結していないというような形式的な理由だけでは,後述する団体交渉などを拒否することはできません.
Q&Aの医師・看護師も,基本的には労組法上の労働者に当たる考えられます.
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