看護□社会学
労働組合
杉 政孝
1
1立教大学社会学部
pp.86-87
発行日 1967年2月1日
Published Date 1967/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913047
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公式的な役割
組織としての労働組合は,経営組織および社会全体に対していわば公然たる役割として,次の二つの機能を持っている。すなわち,A,労働者の各種権利の保護と労働条件の改善,B,イデォロギー的な政治闘争への参加の二つである。Aは通常経済闘争と呼ばれ,Bは政治闘争と呼ばれて区別されることもあるが,同じく働く者の労働条件を改善するといっても,特定の病院という職場組織の中だけでその問題を解決しようと思えば,労働組合の活動はAの範囲に限定されることとなるが,さらにその労働条件を根本的に規定している社会的条件の次元にまでさかのぼって考えなければ,真の意味での労働条件の改善は帰しがたいという問題意識に立てば,Aの延長線上に必然的にBが浮び上ってくるはずであり,この二つの役割は本質的には別々のものではないという考え方も当然なりたつ。ことに,医療のように個々の病院ごとの自由な経営の余地が少なく,社会保障制度や医療費体系のような全社会的制約によって統制される度合が強い場合は,最初の動機が純然たる労働条件の改善という経済的な問題から出発していても,やがてそれが政治的な問題意識にまで発展していくのはきわめて自然な勢いであるのかもしれない。
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