- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
■はじめに
2008年に医師事務作業補助体制加算が設けられ,14年目を迎えた.数多の研究によって「医師事務作業補助者の導入が医師の負担軽減に効果的である」という一点は,ほぼ異論のないところとして確立した.実際,厚生労働省が行う医療施設静態調査によれば,医師事務作業補助者数は2011年調査で約2万人であったところ,2017年調査では約3万4千人に達した.2021年末には2020年調査の結果が公表される見込みだが,さらに増えていることはほぼ確実である.
さて,医師事務作業補助者をはじめとする「医療従事者の負担軽減」の視座は,診療報酬改定のたびに少しずつ変化している.例えば,国が公表した2012年診療報酬改定の説明資料では「負担の大きな医療従事者の負担軽減」と負担軽減自体が目的であったのに対し,2016年には「『地域包括ケアシステム』の推進と『病床の機能分化・連携』を含む医療機能の分化・強化・連携」の下位項目として「多職種の活用」が位置付けられている.2018年もほぼ同様だが,地域包括ケアシステムと機能分化を筆頭としつつも,横並びで「医療従事者の負担軽減,働き方改革」が掲げられた.そして,2020年には両者の順位が入れ替わり,働き方改革が筆頭に掲げられている.この14年間の診療報酬改定の中では,「機能分化」と「負担軽減」が双頭として位置付けられ,後者の主柱として医師事務作業補助体制加算が常に存在感を示してきたことをまずは確認しておきたい.
他方で,医師事務作業補助者の成果指標は今なお黎明期にあり,病院全体としての労働生産性にどう寄与しているかは,まだ明らかでない面も多い.本稿ではこれらの現状をできる限り定量的に概観し,そこで浮き彫りになった労働生産性拡大に向けた課題を整理したい.
Copyright © 2021, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.