連載 病院で発生する「悩み」の解きほぐし方・4
転倒・誤嚥は家でも起きるのに,病院で起きると医療事故ですか?
越後 純子
1
1国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 医療の質・安全部 医療安全対策室
pp.634-636
発行日 2020年8月1日
Published Date 2020/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541211250
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Case
❶夜中にドスンという音がしたため看護師が見に行ったところ,高齢の入院患者がベッドの通常座っている側とは反対側に倒れている状態で発見されました.誰も目撃してはいないので,転倒・転落のいずれかは分かりませんでした.頭部を打撲した形跡があったので,CTを行ったところ,外傷性硬膜下血腫,脳挫傷,くも膜下および脳内出血が見られ,転送先の病院で亡くなりました.離床センサーを付けていなかったこと,そのほか転倒・転落防止措置を怠ったとして遺族との間で紛争になっています.
❷90代の咀嚼・嚥下機能に問題のない患者でしたが,術後5日目でJCS(Japan Coma Scale)が3とやや低下していました.前日も摂食状況に問題ないと判断されていたため,通常の食事が出され,食事中に誤嚥・窒息しました.窒息後1分以内に吸引が開始されましたが,低酸素脳症になってしまいました.蘇生時に吸引したところ,気道から,パンの大きな塊が出てきました.家族から,パンは誤嚥しやすく,誤嚥すると膨張して気道閉塞を来しやすいことから,食事介助を行わなかったこと,パンを細かく刻まずに与えたことが不適切であったとして賠償金を求められています.
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