連載 医療現場の「働き方改革」医療の質を担保しつつ労働負荷を低減させる方法・8
健康管理を踏まえた産業医・産業保健機能の強化
福島 通子
1
,
佐々木 光成
1
1塩原公認会計士事務所
pp.638-643
発行日 2020年8月1日
Published Date 2020/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541211251
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新型コロナウイルス感染症に係る2件の労災が認定ⅰされた.うち1件は医療従事者である.患者の診療などに従事する医療従事者については,業務外で感染したことが明らかな場合を除いては労災と認定される可能性が高い.これまで医療従事者は患者の健康を第一と考え,自身の健康への関心は二の次だったように思う.しかし,自身の健康と安全が守られなければ,質の高い医療は提供できない.医療提供体制の維持のために,医療従事者の健康管理の強化を図ることが重要だと感じたはずだ.医療従事者が業務を通して健康を害するという矛盾は絶対に起こってはならないことなのだ.緊急時であるからこそ,安全衛生の視点で医療従事者の勤務環境を見直し,健康を害する危険因子を取り除く対策を講じなければならない.
感染予防対策の検討に当たっては,衛生管理の知見を持つ労働衛生の担当者の関与が欠かせないが,関与の仕方もこれまでのやり方を見直すことにもなりそうだ.一例として,産業保健スタッフの重要な業務の一つである面接に際しては,テレビ会議で行う,やむなく対面で行う場合には距離を十分に取り,換気に気を使うといった配慮が必要である.産業医・産業保健スタッフの重要性を再認識するとともに,新しい在り方も考えていかなければならない.今回は,労働時間などの物理的な負荷の軽減とともに,健康管理面からの支援が医療の質を担保するということについて考えてみよう.
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