連載 多文化社会NIPPONの医療・22
法改正後も残る「制度の隙間」問題
堀 成美
1
1国立国際医療研究センター国際診療部
pp.534-535
発行日 2019年7月1日
Published Date 2019/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541211003
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2019年度に入ってからも,外国人患者受け入れ体制整備に関連する法制度のニュースが続いている.衆議院に続き,2019年5月に参議院でも可決された健康保険法の改正は,健康保険の扶養枠の家族を保険に加入している人と日本国内で同居している人に限定するという,これまでの方針を大きく変えるものとなっている.扶養の対象が他国の制度に比べて広く緩くなっていた背景には,戦後に家計の主軸を失った残された家族らを救う目的など,日本独自の事情があった注1.当時は日本社会が短期間に多くの外国人を受け入れることになるとは想像もされていなかっただろう.
これまでにも組合健保では独自に,「同居者に限る」「扶養している証明としてXXX万円以上を送金している証明書の提出」などの条件を設定していた.協会けんぽに比べれば,厳しい対応と言えるだろう.実際,「母国の親を日本に呼んで治療をしようとしたときに,保険加入が認められなくて困っている」という相談はこれまでにも月に数件は寄せられていたが,数例を除き独自の健保をもっている会社での話である.協会けんぽでは,その家族の滞在資格や同居状況を確認せず加入できていたので,この「制度の隙間」がブローカーによって利用されてきた.
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