連載 多文化社会NIPPONの医療・17
外国人増加のなかで対応を迫られる結核医療
堀 成美
1
1国立国際医療研究センター国際診療部
pp.146-147
発行日 2019年2月1日
Published Date 2019/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210904
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日本人では縮小傾向にありながら,外国人ではニーズを増している医療がある.かつて国民病といわれた結核である.感染症法で2類の結核は,診断したら必ず保健所に届け出る全数報告疾患で,濃厚接触者の健診も行われる.
図1が示すように,日本で報告される結核の数は順調に減少している.減らすための努力も大きいが,結核菌に感染している人が多い世代(高齢者)が自然減少していることが影響している.全体で見ると外国生まれは7%ほどであるが,29歳以下の若年層になると6割以上が外国生まれとなっている(表1).よくある誤解として,「うちは富裕層外国人のみを受け入れているから結核は関係ない」というものがある.確かに結核菌に感染しただけでは全員が発病するとは限らない.イメージしやすいのは,休みなく働き,食事を切り詰めるという厳しい環境にいる外国人労働者が発病するパターンである.しかし,日本での医療を希望する富裕層であっても,もともと高流行地域で生活していたり,日本で希望する治療が免疫低下を伴う疾患であったりする症例が多く,治療のプロセスの中で結核と診断されることがある.現在,各地から「外国人増加に備えて何をすればよいのか」という相談が増えているが,その多くは通訳や未収金の話である.しかし,結核をテーマとして,感染管理,医療安全のリーダーと共に今ある取り組みを見直して,必要な対策を加えることをお勧めする.以下,外国人受診者の受け入れ体制整備に取り組むためのアクションリストを紹介する.
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