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■はじめに:激流に翻弄される医療
小西 最終回に当たり,本連載を法の立場から見守り続けてくださった宇都木伸先生と,医療の立場から見守り続けてくださった三木知博先生をお招きして,今,そしてこれからの医療と法の潮流の読み方を一緒に考えたいと思います.まず,宇都木先生に口火を切っていただきましょう.
宇都木 本連載で取り上げたあらゆる分野で,総合化が問題になっていると感じました.領域ごとのそれぞれの歩みを相関させ・総合しないと,どうにもならない時代に立ち至ったのだと思います.
法律の動きも,まず「社会保障制度改革推進法」(2012年)で基本方針を定め,それに従って「社会保障改革プログラム法」(2013年)がつくられ,その施策の一部として「地域医療介護総合確保法」(2014年)がつくられてゆく.まさに総合的思考はすばらしいと思う一方で,危惧を抱きます.最初の方向付けは抽象性が高くて解釈の余地は広く問題点がよく見えないところがあるが,次々につくられてゆく具体的な各法の中で方針が具体化されて,初めて見えてくる側面がある.こういう状況の中では,現場の人は「現場の必要性」という観点にしっかりと立って,法制度の解釈の声を上げてゆく必要がある,と思うのです.
例えば,上記の社会保障制度改革推進法第2条が挙げる基本的考え方4点は,すべて「費用」の問題でした.これを,本連載の中で疑問とされた諸点に照らしてみると,全体像が見えてくるところがある.もう一度,社会保障という経済制度の中での「医療」というものの位置づけから問い直してゆかないと,「なにか変だなー」と思いつつも,大きな流れに押し流されてしまう.
この「変だなー」という「感覚」は,現場の人だからこそ抱くことができるものであって,これを生かしてゆくことは患者さんに対する専門家の責任であると思うんです.
小西 ありがとうございました.三木先生,いかがでしょう.
三木 宇都木先生から法の大きな流れについてお話がありましたが,超高齢社会を迎え,それに伴い医療もそのシステムが大きく変化してきています.私は臨床医として,問題がますます先鋭化し,例えば,本連載で取り上げたテーマの中では,医療と介護の関係とか,ガイドラインをめぐる問題とか,尊厳死の問題などは待ったなしの状況になっている気がします.
小西 どうもありがとうございました.
さて,ここで本連載で何を取り上げてきたかを振り返ってみましょう.すると,「チーム医療」「医療安全」「医療政策」という3つのキーワードが浮上してくることがわかると思います(表1).
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