連載 事例から探る地域医療再生のカギ・5
塩竈市立病院の財政再建
伊関 友伸
1
1城西大学経営学部マネジメント総合学科
pp.684-689
発行日 2015年9月1日
Published Date 2015/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209926
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■何が問題だったのか
市財政を圧迫する塩竈市民病院の財政
宮城県塩竈市は仙台市の東方に位置する人口約5万5千人の都市である.古くは奥州一の宮である鹽竈神社の門前町として栄え,明治以降は国内有数の港湾都市,近海・遠洋漁業の基地としても発展してきた.宮城県で3番目に市制を敷いた塩竈市ではあるが,1971(昭和46)年に仙台港が開港し,相対的な地位は低下の傾向にある.塩竈魚市場の水揚げ量も1991(平成3)年の317億円から2004(平成16)年には112億円まで落ち込んでいた.市街地にある商店街も他市の大規模店に顧客を取られ低迷していた.市の面積が狭いこともあり,新たに住宅地を供給することが難しく,人口は1995(平成7)年の63,566人(国勢調査)をピークに減少の傾向にあった.
そのような中で,塩竈市はバブル崩壊後の国の総合経済対策に対応して積極的な公共投資を展開し,2004年の市債残高は223億円で,10年前の1994(平成6)年173億円に比べて1.3倍に増えていた.一方,市税は1994年度の75億円から,2004年度には63億円に減少.2005(平成17)年末の財政調整基金(財源を調整するための基金)が4,196万円,減債基金(市債の償還のための積み立て基金)が64万円まで枯渇していた.2004年から5年間で約40億円の財源不足が見込まれ,宮城県庁からはこのままでは塩竈市は財政再建団体となると警告を受けていた.
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