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■はじめに
平成27(2015)年6月上旬に地域医療構想策定のためのデータブックが各都道府県に配布され,6月中旬には保健医療科学院で配布された資料の活用方法に関する研修が各都道府県の担当者を集めて行われている.これを受けて,各都道府県では地域医療構想調整会議(以下,調整会議)が開催されることになる.
今回の地域医療構想策定作業では調整会議の場にデータブックのデータが提供され,それをもとに関係者が現状とその課題を把握し,2025年のあるべき医療提供体制を構想し,それを医療者のイニシアティブにより実現していくことになる.これまでの医療計画はどちらかというと都道府県の担当部局が厚生労働省の示すガイドラインに従って「作文」し,その内容を事後的に医療委員会で承認するというプロセスで策定されるのが一般的で,そこに医療関係者や住民が主体的に関与することは少なかった.また,記載されている内容も散文的なものが多く,その実行が行動計画として保証されたものは少ないのが実情であった.
今回策定される地域医療構想はそのようなものではない.2020年にプライマリーバランスの黒字化を目指す政府にとって,社会保障費の適正化が重要な課題となっている.また,団塊の世代が後期高齢者になる2025年に備えてどのような医療提供体制を作っていくのかが喫緊の課題となっている.2013年に策定された第6次医療計画はこのような課題に応えるものになっておらず,それが地域医療構想策定の前倒しにつながったと筆者は理解している.このような危機感のもとで今回の構想策定が行われることを関係者はまず理解する必要がある.形式的な会議ではなく,実質的な協議が行われる会議でなければならない.そこで本稿では,調整会議で議論される主な資料の論点について,資料作成にかかわってきた研究者の立場から説明する.本号に収載されている「鹿児島県姶良・伊佐地区における模擬『地域医療構想調整会議』」(564ページ)の内容と合わせてお読みいただければと思う.
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