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■はじめに
前報では慢性期の検討方法について説明した1).その理由は,今後団塊の世代が80歳を超えてくることによって急増する医療介護生活の複合ニーズを持った慢性期の高齢者,そしてそこから発生する高齢者救急への対応が,新しい地域医療構想では最重要課題になると考えるからである.前報では慢性期を入院+介護施設入所+在宅とした上で,地域の医療・介護の提供体制の制約を踏まえて,これら3要素のベストミックスを考えることが重要であることを指摘した.例えば,後期高齢者の絶対数が急増する都市部では,療養病床,介護施設の相対的不足から在宅ケアの提供量を増やすことが必須となる.
ただし,筆者らの医療介護レセプトを用いた分析では,在宅ケアが安定的に提供されるためには,肺炎や心不全の悪化などの急性期イベントが発生した際に適切に対応できる往診と入院体制が必要であることが明らかとなっており2),在宅や介護施設の医療を支える病院を整備していくことが求められる.
図表1は新たな地域医療構想において,各地域で構築が目指されるべき体制について筆者の考える模式図を示したものである.広域で急性期医療に対応する病院(ここではType A病院とする)と日常生活圏域で在宅や介護施設の医療を日常的に支援し,高齢者救急対応の中核施設になる病院(ここではType B病院とする)を,どこにするのかを明らかにしていくことが,地域医療構想調整会議では重要になると筆者は考えている.その意味で,新たな地域医療構想では,高度急性期,急性期,包括期,慢性期といった病床区分に加えて,各病院の持つ病院機能(高齢者救急・地域急性期機能,在宅医療等連携機能,急性期拠点機能,専門等機能)を報告することになったことは,具体的な検討を行うための重要な契機になると考える.
ここで,Type AとType Bの病院機能に関する筆者の考えをまとめておく.
●Aの機能を持つ病院に求められること→特定機能病院,地域医療支援病院
▶広域で急性期機能(がん診療,手術,救急,周産期,医師派遣など)を持つこと
▶その機能を24時間365日体制で担える人的資源,物的資源があること
●Bの機能を持つ病院に求められること
▶介護施設や在宅医療を担う診療所を支える機能
▶高齢者救急への対応(一次対応,調整,下り搬送の受け皿)
▶傷病としては肺炎,心不全,尿路感染症,脱水など,高齢者救急で問題となる内科的疾患への対応
▶地域における医療介護連携の中核としての調整機能を持つこと
病院機能報告との関係ではType A病院が主に急性期拠点機能,Type B病院が主に高齢者救急・地域急性期機能,在宅医療等連携機能の役割を担うことになる.専門等機能については,その領域によってType AとType Bのいずれもあり得る.ただし,病院機能は,複数の選択が可能であり,また領域別にType AとType Bの両方の機能を持つこともあり得る.そして,その選択は現在行っている医療内容からある程度明らかである.本稿ではこの点について論考を行う.
なお,前報と同様,本稿の記述は筆者の私見であり,筆者が所属する委員会や厚生労働省の見解ではない.したがって,記述内容に関する一切の責は筆者に帰するものである.

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