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■はじめに
平成28(2016)年度に47都道府県の地域医療構想の策定が終わり,平成29(2017)年度は各構想区域で調整会議が開催されることになった.厚生労働省は図1に示したような工程表(案)を提示し,議論の進捗を促している1).筆者がこれまでも指摘しているように,地域医療構想の目標は病床数の削減ではない2).各地域の人口構造およびそれに関連した傷病構造の変化に対応するために,データに基づいて各施設が地域の他施設との関係性の中で自らの判断で医療機能を選択し,全体として適切な医療提供体制を構築していくことが目的である.その意味で地域医療構想の推計値が独り歩きしてしまい,数合わせの議論になってしまえば,本来の目的が達成できないばかりでなく,地域医療の現場に不要な感情論的混乱を招くことになりかねない.そもそも機能別病床数の推計に際しては,①機能分化を進める,②療養病床の医療区分1の患者の70%を入院以外で対応する,③療養病床入院受療率の都道府県格差を縮小する,という3つの仮定が置かれているが,地域によってこれらの仮定が成り立たない状況があるならば,それを現実的な対応策に置き換えていく必要がある.特に急性期以後の入院医療提供体制をどのように構築していくのかは,在宅医療や介護サービスの状況,さらには住環境に大きく影響される.こうした条件を丁寧に検討する場が調整会議であると筆者は考えている.
本連載ですでに指摘しているように,高齢化の進行に伴い,医療と介護の複合化が進んでおり,その結果,一次医療→二次医療→三次医療という階層モデルではなく,種々の機能を持った施設が同じ平面上で相互に連携するネットワークモデルを構築する必要性が高まっている3).ネットワークが機能するためには調整機能が必要であり,その活動が制度として確立される必要がある.図2は筆者らが広島県の医療・介護レセプトをもとに,股関節大腿骨近位部骨折の患者が急性期病院に入院した月の連携状況(連携関連レセプトで把握)と3カ月後の訪問診療受療率(同じくレセプトで把握)の相関をみたものである4).両者の間には明確な正相関が認められる.国が目標とする「時々入院,ほぼ在宅」体制を実現しようとするのであれば,こうした施設間の連携をいかに進めていくかが課題となる.
地域医療構想調整会議の場では,このような地域における患者の流れについてもデータに基づいて議論することが必要であろう.地域の各病院の患者の入退院の状況を検討することで連携の現状と課題が見えてくるはずである.そして,この検討のためのデータはすでに各都道府県に提出されホームページ上で公開されている.今回はこのデータの活用方法も含めて,地域医療構想調整会議における議論のあり方について論考してみたい.
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