医療従事者のための患者学
"患者心理"を理解する(その3)
木村 登紀子
1
Tokiko KIMURA
1
1聖路加看護大学心理学
pp.977-981
発行日 1989年9月1日
Published Date 1989/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209690
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普通の社会生活を営んできた人がある日身体の不調を感じて受診を決心し,自分の判断で病院を選んで,"患者"すなわち"医療機関の顧客"となることは,身体的のみならず,社会的にも心理的にも,それまでの生活とは異なる特殊な世界に足を踏み入れることになる.すなわち,患者は大なり小なり"患者心理の陥穽"に陥って,健康なときの反応とは違った心理状態にあることについては,これまで繰り返し述べてきた.そして,前々号より3回にわたり,患者心理の特質について心理学的側面からの説明を試みている.本号では以下の2点をテーマとして論じてみたい.
まず第1に,患者のさまざまな特質や状態を考慮しながら患者を理解しようとする上で,既成の心理学の理論や知見の中から役立ちそうなものを選んで簡単に紹介する.ここで言う「患者の特性や状態」とは,例えば患者の年齢(特に乳幼児期から老年期に至る発達過程における現在の到達段階),現在置かれている環境の特質やこれまでの経験の特徴,普段からの物事に対する取り組み方,知的・感情的な個性(広義のパーソナリティ特徴),病気の種類,疾病経過の段階などを意味する.
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