医療従事者のための患者学
"患者"とは何か—その哲学的基礎の探索
木村 登紀子
1
Tokiko KIMURA
1
1聖路加看護大学・心理学
pp.262-266
発行日 1988年3月1日
Published Date 1988/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209261
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—なぜ哲学的基礎を求めるのか
前稿において成立の必要性を述べた"患者学"を展開させるに当たり,まず哲学的背景を検討するのは,本来的には論ずる視点を定めるためである.しかし,まだ「学とは呼べない"学"」の課題と方法を根拠づける既成の哲学論などはあろうはずもない.また「"患者"とは何か」という問に対して,すぐに答えてくれる哲学も現存しない.
ここでは,「患者という存在」の特徴を明確にすることを目的として,古今のいくつかの哲学的知見を尋ねてみる.そして,この探索の具体的な手続きとしては,まず「人間の存在としての特質」を模索し,それと対照させる形で「患者のこころの特徴」を導き出そうと思う.なぜなら,前回,よりよく患者を理解するために試みるアプローチとして,"個別的あるいは諸々の患者の体験の奥にある「人間のこころ」の動きと,その「こころの動き」を引き起こす源としての「人間存在の特質」を探り,それによって,種々の事例や筆者の遭遇した体験や既知の測定結果をもう一度見直し解読し直したい"と述べたからである.
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