医療従事者のための患者学
東洋における"患者"や"病気"の捉え方
木村 登紀子
1
Tokiko KIMURA
1
1聖路加看護大学・心理学
pp.354-357
発行日 1988年4月1日
Published Date 1988/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209280
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なぜ,東洋的な人間観や患者観を考察するのか
前回試みた「"患者"とは何か」の哲学的基礎づけにおいて,"患者学"の核となるのは,病気(あるいは怪我)によって苦しんでいる「人格」そのものであることが示された.引き続き今回,東洋的な見方や東洋医学における"患者"の把握の仕方を概観するのは,主として次の二つの理由からである.
第1には,前回検討した「人格」という概念は,東洋的な人間観で言えば何に該当するのか.あるいは西洋と東洋では全く異なる人間の捉え方をするのか.また,東洋における心身一如としての,あるいは自然の一部としての人間の捉え方や,東洋医学における病人や病態の把握の仕方を学ぶことによって,病気の背後にある人間そのものを浮き彫りに出来るのではないかという視点からである.すなわち,"患者学"の重要なテーマである「個別的な患者の全人的把握」や「現在時点を中心とした共感的理解」に関して,また「人間存在としての患者にどうかかわるべきか」について,東洋的なものの考え方の叡智を加えることによって,もっと豊かな展開が可能になるのではないかと予測しているのである.
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